赤 虫  

 

「メダカ釣り」の餌に使う赤虫はユスリカの幼虫である。

街の熱帯魚屋に冷凍物が売られていて、見た目、板チョコか、薄い文庫本のような形状。
各種あって、250円〜500円。買う際には、保冷パックを持参した方がよい。

 

釣り餌には冷凍物より生き餌の方が勝っている。

が、生き餌は求めにくい。

街の熱帯魚屋で扱っているところは少ない。求めるなら釣具屋だ。餌も各種扱う店へ行き、特別注文する。
常備餌ではない。受注の後、問屋へ連絡し、取り寄せるといった手間がかかる。
月曜に発注⇒木曜に受け取り、が、通例。

値は、メンソレタームの小さな薬缶大ひとつが200円〜300円。

赤いのがグニャグニャ動いている。おいしそうだなぁ〜。
ユスリカは揺蚊。水中でユラユラ身体を揺するから…。貧乏なんだなぁ〜。

 

昔は、日本のどこにでも赤虫は居た。貧乏だった。

ちょっとした水溜りなら赤虫がいっぱい居た。

が、最近は、どこを探しても見つからない。

赤虫は環境適応能力が極めて優れた生物。

が、しかし、彼等は、この日本では、その棲息域を失ってしまったかのようである。

餌で出回る赤虫は、ほとんどが中国大陸からの輸入物だと聞いている。

日本では、溝などの排水が汚くなりすぎたから、赤虫が住めなくなったのかというと、必ずしもそうではない。
赤虫は案外綺麗好きで、ある程度澄んだ水の方が好みらしい。

わたしの知人に下水工事などの専門化が居て、

「あいつらは下水処理場へ行けばいくらでも居る」と言った。

処理済みの綺麗な水(浄水)の排水溝の縁に沸いているという。

早速、わたし、採取に伺いたいからと案内を請うと、数日後に返事があって、

「おかしいなぁ〜、ついこないだまではギョウサン居ったのに、どこを探しても居らん」とのこと。
消滅原因は定かでない。だか、なぜだかわからんが居なくなった。ここで、ダメなら、どうしようもない。

 

赤虫で注意すべきは、ある種バイ菌のかたまりであるってこと。
赤虫の養殖には鶏糞などが使われるらしいが、除菌養殖するわけじゃない。バイ菌養殖といってよいくらいなもの。
赤虫を手で触って、手も洗わず、その手で食事したりしたら、たちまち腹を壊すことになる。
食わされた魚たちも同様だ。細菌汚染は免れない。冷凍物より、生餌がより危ない、危険だ。
で、「メダカ釣り」の餌は冷凍物を使うことを勧めたい。
これなら大概の熱帯魚屋に備えがあるし、冷凍物は、洗浄後、一応の除菌処理がほどこされていると聞く。

 

さて、赤虫はユスリカの幼虫である。ユスリカといえば、例の蚊柱の主。
と、いうことは、蚊柱が立つ近くには、赤虫の棲息地があるってこと。

そういえば、最近は、蚊柱が身にまつわり付き、気持ちが悪かったことなど忘れておる。
土手を散歩すると、歩く先々に蚊柱が追いかけてきて、どうにもこうにもならなかったように思うが、最近は、そういうことがトントなくなった。
あれは気持ち悪くはあったが、刺されたり噛まれたりしたことはなかった。蚊とはいうが、蚊ではないらしい。

 

ユスリカ学ってぇのがあって、この研究は立派な学問分野であるらしい。

ユスリカの幼虫は、すなわち、赤虫は、川底の栄養塩類(富栄養化の原因たる窒素・リンなど)を浄化・除去し、水質保全に力があるそうだ。
立派にひとつの生態系に組み入れられた生物だったということである。過去形だ。

赤虫が住めなくなった日本は、生態系のバランスが崩れつつある国でもあるってことか。
ひょんなことながら、「メダカ釣り」の意義を思う。