魚釣り党  

 

12月14日朝8時03分、快晴、室内は暖房が効いて暖かい。

が、庭の陽だまりに据えたメダカ鉢の水温は4度。

メダカらは水草のなかに身を隠し、1匹も姿を見せない。この水温ではもう動けないのだ。かれらは元来熱帯魚である。

 

読売TVの『大阪ほんわかテレビ』制作スポーツ局が、「メダカ釣り」の取材に来られたのは12月8日(水)だった。

穏やかに晴れた暖かい日だったが、季節は冬。メダカらの動きは鈍かった。

このところほとんど冬眠状態でじっとしていたのを、撮影のために、あらかじめ暖め置いた、あたたかい水の中へ放ち泳がせたわけだが、体調が整わぬげであった。

急に暖水へ放ったわけではない。徐々にならし移したつもりだったが、この環境変化はきつかったってことだろう。

 

いざ釣る段になって、餌を垂らすも、メダカ等は鈍な眼(?)でモゾモゾ泳ぎ、あの夏のキビキビした様とはまるで違っていた。餌も、これは冷凍物買ってくるのだから季節には関係ないようなものだが、解凍してみるとまさに冬のそれであって、真夏の美味そうな餌とは一味違っていた。

 

釣り辛かった。

わたしと、ゆりたろうとで、ようよう数匹釣りあげ、なんとかカメラに納め得たが、リポーターのアナウンサー氏は、とうとうボーズのままであった。

この日は、アナウンサー氏も、体調が良くなかったのではないか。疲れたお顔をしておられた。

氏は、撮影の出番が来るまで、取材車のなかで一人休んでおられた。

出番が来ると、撮影助手の方が、そのつど車まで氏をお迎えに行った。

寝ぼけた顔で出てきて、カメラが回ると、とたんに闊達な表情に変身し、カメラが止まるとまた車へ戻られた。

わたし、メダカの機嫌はとりなれているが、ゴルフ好きのアナウンサー氏の体調までははかりかねた。

 

「メダカ釣り」のことは、好きなお方と、好きでないお方がある。

あたりまえだ。

魚釣り党があり、ゴルフ党がある。

はたまたプロ野球観戦党や、競馬・競輪・競艇党や、パチンコ党もあろう。

「メダカ釣り」は、魚釣り党の遊びである。

アナウンサー氏は、ゴルフ党だった。

以前、取材で、魚釣りをしたことがあるとのことだったが、それ以外は自分で釣りをしたことはないとか。

 

わたしと二人、メダカの泳ぐ水盤(石菖鉢)に向かって座り、イザ釣ってみようとしたとき、氏は、メダカたちへ挨拶のつもりか、鉢の縁をコンコンと叩いた。

「コレ!鉢を叩いたりしたらアカン、メダカがビックリする!鉢が大地震や!」

と、わたし、思わず悲鳴をあげた。

 

幸い、ほどなく1匹釣ることができた。

が、氏は、執拗に釣りを試みたが、結局釣る事ができなかった。

氏は釣りをしているようで、その実は、釣りをしていなかった。

「エエですか、魚釣りとは、“糸の先に魚が居て、竿尻にバカが居る”ってことですよ。魚を釣る人も、それを橋の上から眺めている人も、やはり“釣り人”です。釣ったから、釣れなかったから、は、あまり関係ない。今日は、メダカらは“釣られたくない”らしい」と、わたし。

それでも、なんとか1匹釣ってやろうとがんばるアナウンサー氏。

「ほれ、ご覧ください、メダカの影が水盤の中に泳いでいるでしょう。実に綺麗だ。観ているだけで飽きませんよね」とわたし。

氏にはメダカの影なんか関係なさそうだった。

釣れなくて、氏は、もうクタクタになっておられた。

わたしも疲れた。

「メダカ釣り」は、魚釣り党の遊びである。

 

どんな絵(編集)になっているのだろう。

楽しい絵が撮れているだろうか?

来春1月9日(日)夜の読売TV「ほんわか」で放映とのことである。